設立準備委員会の会長、大美光代です。
準備委員会のサイトを見てくださり、ありがとうございます。「そもそも何で財団が必要なの?」、「財団ができたら何をするの?」という皆さんの「?」にお答えするため、少しお話しさせてください。
ほんの10年前まで、私は地域の「地」の字も興味がありませんでした。
むしろ、ひとり親家庭で育児と仕事に追われ、地域との関わりはわずらわしいとすら感じ、小学校のPTA活動も「絶対6年間逃げ切ってやる!」と思っていました。
9年前に自営業となったこともあり、少しずつ地域との関わりができるようになりました。その時に私が感じたのは、「知らないところで、私たちの暮らしを支えてくれていた地域の人が、こんなにたくさんいたのか!」という驚きでした。息子の登下校を見守ってくれる地域の先輩たち、子どもに様々な体験や出会いの場を提供してくれる地域の活動など。この頃、それまで全く関心も接点もなかった「子育て支援」や「市民活動」、「コミュニティセンター」という言葉を初めて知りました。
また、地域の課題解決に取り組む方々とも接点ができました。彼らは、あきらめず、粘り強く、「少しでもより良い明日を!」と日々奮闘しています。それまでの人生でそんな人達に出会うことのなかった私は、「こんな人たちがいるのか」と、大きな衝撃を受けました。
そして、自分自身も「地域やこの人たちに関わっていきたい。できることなら何かお役に立ちたい」と思うようになりました。
そんな思いで、今から5年前の2018年1月に設立したのが、NPO法人わがことです。
わがことは、地域の課題に直接アプローチするのではなく、地域の課題解決に向けてアクションを起こす人たち、すなわち地域のNPOを支える団体です。間接支援や中間支援と呼ばれます。
設立からの5年間で、高松市からの委託事業も含め、さまざまな事業に取り組んできました。若者の意見を市長に提言する政策コンテストや、地域コミュニティの会議のコーディネート、自主事業では「活動ご自慢大会」というタウンミーティングを定期的に開催してきました。
さまざまな事業に取り組む中で、地域課題だけでなく、NPOの運営上の課題にも気づきました。「この団体、なくなったら絶対に困る!」、「この活動は今後もっとニーズが高くなるぞ」という大切な団体や活動には共通の悩みがありました。「活動する仲間が増えない」、「資金が足りない」、「若い人にも参画してもらいたい」などの悩みです。
このままでは、今まで当たり前だったことがジワジワとなくなり、暮らしも変わってしまうのでは、という危機感を持ちました。
そして、「人がいない」、「お金がない」という課題は、既に活動している人だけで必死に頑張っても、そうそう解決されない課題だと直感的に思ったのです。
「今のうちに市民が寄ってたかって関われるような仕組みと風土を作り始めんと手遅れになるな」と。
そんなことをモヤモヤ考え始めるうちに、市民財団(コミュニティ財団)という仕組みに出会いました。
全国には30以上の市民財団が存在しますが、香川にはまだありません。
知れば知るほど、「これなら市民の誰もが、地域の未来に関われる仕組みにできるかも知れない」と思うようになりました。
市民財団は一般的な財団法人とは違います。余裕のある個人・企業・行政がまとまったお金を出して運営するのではなく、市民からの寄付で運営するのが市民財団です。寄付文化になじみが薄いと言われる日本で「そんなことできるんか?」と思った反面、他の地域でできていることが香川でできないはずはないし、一部の人で支えるのではなく、1人ずつは少しの資金と意思で構わないから、多くの人に託してもらえることができたら。そんな市民がたーっくさんいる、高松、香川はそれだけで最高におもしろい町になるんじゃないかと思ったのです。
てらす財団は、中間支援の仕組みです。もちろん、「財団」を名乗る以上、資金のやり取りもします。その資金の原資は、「ご寄付」です。「こういう活動に使ってほしい」「こんな地域の課題解決に活用してもらいたい」そんなご意志と共にお預かりし、寄付者のご意志を尊重し、てらす財団が管理します。
ただ、資金のやり取りは財団の機能の一端にすぎず、一番重要な役割は、地域の小さな困りごとを、多くの市民と共有し、みんなで支え合いながら、地域総出で豊かな暮らしを実現することです。
例えば、こんな事例があります。
私が個人で関わっているひとり親パートナーズという任意団体があります。3年前、一斉休校に始まったコロナ禍をきっかけに、食品の配布会や親子講座の開催等を定期的に開催しています。
パートナーズには礎となった活動があって、1人のひとり親さんが年に1度、当事者同士の交流の場づくりをしていました。もちろん手弁当です。その方が、「一斉休校で子どもの昼食もままならない」とのS O Sを受けて、自宅の冷蔵庫から必要なものをかき集めて、困った家庭に届けるということを始めました。それを見た周りの仲間が、「これでは続かない。もっと仕組みを考えてしっかりやれる方法を一緒に考えよう」と、パートナーズの活動が始まりました。
周りにたまたま中間支援的なことを知っている人がいたことで、助成金の獲得や広報物の作成、他の主体との連携がうまく進み始め、3年間でのべ3,000以上のひとり親世帯に食品や日用品、親子講座、その他暮らしに関わる情報を届けることができました。
1人の手弁当から始まった活動が、いろんな人が関わり合って一緒に育てることで、必要な社会資源として広がっています。
こういう活動のタネが、地域にはたくさんあることを私たちは知っています。
タネは、大人だけでなく、子どもや若者の中にもたくさんあります。
小さな声を聞き、それを放っておけない人たちは「できるかな」「どうやったらいいかな」「少しだけど資金がないな」と立ち止まってしまうことがたくさんあります。
そんな時に、少額の資金を寄付者の皆さんのご意志とともに届けることができたら。
「どうしたらいい?」と相談できるところがあれば。
小さなタネがあちこちで芽吹き、それをまたみんなで見守り育てていけたなら、彩り豊かでより安心して暮らせる地域になるんじゃないかと思っています。
そのためには、地域のことに関心を持って、何かの形で関わりたいと思っている人たちが1人でも多く関われるプラットフォームが必要です。ひとまず初年度の目標は、1,000人です。
てらすに関わってたら地域のことがちょっと身近になる。自分のできることで関われる。
そんな「共有」と「参画」の役割を、てらす財団が担います。
地域の課題をみんなで解決する仕組みづくり、地域で挑戦する人をみんなで支える仕組みづくりにご賛同いただけるなら、ご寄付や運営をお手伝いくださる形で、是非私たちの仲間に加わってもらえると、うれしいです。
何が始まるのか、一緒にワクワクしてください!
てらす財団設立準備委員会 大美光代